[内容解説]
1988年に劇場公開され、漫画の域を超えてアニメの世界までも革新したアニメ映画版『AKIRA』。このアニメは原作者である大友克洋自身が、監督と脚本を務めるという異例の製作体制で作られながら、世界的な評価まで得ているという破格の名作である。本書は、そのアニメ版を製作するにあたり、大友自身が自ら描き上げた膨大な量の絵コンテを全2巻にまとめたものの第1巻にあたる。かつてヤングマガジン編集部から1988年に、同じく2分冊で刊行されていたが、短期間で絶版となって以来、長らくプレミア品となっていたレアアイテムが、「大友克洋全集」の第1期・第1回配本タイトルとして、遂に待望の復刻となる。これは単体の商品としては30年以上ぶりである。絵コンテというと、ラフに描かれた未完成な設計図と思われがちだが、本書のコンテの精密度は桁が違う。それもそのはず、著者がこれを描いたのは、映画版『AKIRA』製作のために漫画版の連載を中断していた1987年頃であり、単行本でいうと5巻の中盤を描いていた時期。連載バリバリ時期のテンションで描かれた絵コンテの緻密さやキャラクターの躍動感は、漫画本編に勝るとも劣らないレベルなのだ。なお本書はA、B、C、Dから成る全4パートの前半A・Bパートを完全収録し、全500ページ近い大ボリュームとなっている。眺めるだけでアニメ版『AKIRA』の映像が脳内に再生される「読む動画」の如き本書ゆえ、熟読すればするほど著者の驚異的なアニメ製作術に触れることができるはずだ。なお、書名の「Storyboards(ストーリーボード)」とは「絵コンテ」の英語表記である。
[OTOMO THE COMPLETE WORKS とは?]
世界的なタイトルを次々に生み出し、漫画家、イラストレーター、映像監督、シナリオライターなどのジャンルに囚われない創作者の顔を持つ大友克洋。その多様な「全仕事」のすべてを、作者である大友克洋自身が時代順に俯瞰、総括、そしてリ=プロデュースするのが「OTOMO THE COMPLETE WORKS」(大友克洋全集)です。日本から世界中に衝撃をもたらした表現方法の集積は、一人の作家のパーソナルな仕事集というだけでなく、1970年代から現代までの漫画、アニメ、映像までをも含む、現代文化の冒険を愉しめる作品集とも言えるでしょう。時代によって何が生み出されたか。作家は時代に何を見て、考えてきたのか。そして作家は、次に何を試みていくのか。──作品から発言までを網羅することで、作家としての進化を明らかにし、次の世代の創作者へその姿勢を伝えていく。この全集は作家自身が自らを「作品化」し、手触りも含むモノとして記録する、まったく新しい全集となります。(編集室より)
+ もっとみる